好きを、つらぬけ。

こんにちは。創世風満智留です。
創世風座も「三号公演」、3回目の公演実施に辿り着きました。一発屋で終わらなかった安堵と、一発屋で終わらせない難しさを同時に実感しております。
『と或るメルヘン』演出を務めます。去年、自分が初めて関西を飛び出したきっかけの公演を、今年は自分で背負うことになりました。
今公演を演出として立つにあたって、実は多くの葛藤がありました。
まず私自身、現在体調に波があり、常時は月1,2回とかいう高頻度で本番を迎えるところを、今は全部断っています。
そしてそれと同じぐらい、「一度初演で完成形を創った当人だった」という難しさもあります。もともと『と或るメルヘン』が、私もロカイユを共にした彼ら彼女らへの当て書きだったということも理解しています。私の中では一度完成形としてショーケースに仕舞った、あるいは額に入れた、そんな作品でした。
私がこの脚本を初めて読んだ時は、変な声で唸ったのを覚えています。そして、この脚本を自分で書いて演出しきった春さんが心底羨ましかった。これが自分の手の演出じゃないのが悔しい、自分もできたらな、と思う脚本である一方で、『と或るメルヘン』は一回完成させた作品、徹頭徹尾春さんが表現したいものを創ったという認識なので、自分の手で上塗りしたくなかった気持ちはありました。『新説・銀河鉄道の夜』や『Novelist』とは違い、私の手を加えてしまうことにはかなりの葛藤があったし、この脚本の絶対の正解を自分が出し切れないんではないかと怖気づきすらしました。新説とNovelistを創ってしまったからこそ、次も、という期待があることを見越しての、前回の二号公演での「小田春×創世風満智留世界観はここで一区切り」発言でした。誤解のないように急いで付け足すと、春さんの言葉が大好きで、春さんをこよなく尊敬しているのは大前提です。だからこそ、春さんの言葉と世界観には、生半可な気持ちと環境で対峙したくはないのです。
いっぽうで、今公演の原案のひとつ・岡本かの子『金魚撩乱』を、ロカイユが先に演劇にしたことを悔しがっていた劇団員がいました。うちの在津花奈です。「小説を演劇にする」という傾向の強い私たちです。その日も梶井基次郎あたりを本棚から引っ張り出してきては、演劇にしたいあれやこれやを語っていた中での話題でした。
その話からしばらく経って、年度が明けた後の話。先に「三号公演をやろう」という話がありました。創世風座の中では、演目は何になるか、演出は誰になるか……色々な劇団員の「好き」「やりたい」が交錯しているなか、在津は慎重な私を説得します。
・「心残りなのは、二号公演で春さんともっと仲良くしたかったこと」
・「春さんの脚本が好きだから演じたい」
・「金魚撩乱やられてんの悔しい、私にもやらせてほしい」
・「宮島さん、堕ちていく男を見れますよ(前から見たいとは思っていた)」
当時、言われた瞬間に、短期記憶のうちにメモったのでだいたい合っているはずです。シラフでこれほどの強い思いで迫られると、まぁ一旦悩んでみるか……という気持ちになるものです。というのも、まず私はもう関西にはいないし、何より療養の身なので、稽古より治療が優先されます。関西の稽古場には全面的なサポート役が必須。そしてそのサポート役は、春さんの世界観を、私たちと共に表現できる理解者であってほしい。そしてもちろん、稽古場の実地にいる役者陣とも円滑にコミュニケーションが取れてほしい。この条件に当てはまる演出助手は、私の知る限り右に同じしかいない。ロカイユの初演でも劇中映像の金魚を描いてもらった縁はあったので、縋るような思いでおそるおそるオファーをしてみると、拍子抜けするくらいの快諾を得ました。同じようにおそるおそるとしていた春さんへの上演許可も拍子抜けするぐらいの快諾を得て、いよいよ実現性に満ちた企画がここに完成しました。私一人で背負うのではなく、全員からの「好き」と「やるぞ」の意志が見えて、その場をうまくアレンジするのに私が必要とされている。全員の熱量に後押しされる形で、演出として立つことにしました。
春さんの脚本にはよく「キレイなコトバ」という評価がつきます。しかし私は、それは氷山の一角だと思うのです。春さんの本は「キレイなコトバ」で片付けられるような、美辞麗句を整然と並べた脚本ではないのです。清濁併せ持つ人間の情念を、高感度で繊細な感性でもって組み上げているからこそ、読む私たちが「キレイなコトバ」として人々が受け取れる体裁になっているのであって、その饒舌なサブテキストをうまく表現できないと演出が上滑りするという難しさがあります。真珠のビーズをただ並べた純白のアクセサリーを目指すのではなくて、天然石もアンティークもヴィンテージもパールも、それぞれをそこに並べる妙をできるだけ感じ取った演出が要求される。私はその高純度・高水準に向き合うのが好きです。
「好きを、つらぬけ。」三号公演に設定しためあてです。全員の「好き」を共有できる座組を、きちんとつくろうと思います。

